中央大学 · 2026年度 · 理論化学・溶解平衡

溶解度積と共通イオン効果理工3学部(一般・英外) 化学 第Ⅰ問(6)

純水中では「銀イオンと塩化物イオンが同じ濃度」、食塩を加えた後は「塩化物イオンの方が多い」。平衡定数は同じでも、置ける条件が変わります。式を2つに分けて使う理由を確認しましょう。

反応と分子を表す化学の概念イラスト
考え方のイメージ図。正確な条件は下の図で確認。
中央大学 2026年度 · 化学

問題文・図

理工3学部(一般・英外) 第Ⅰ問(6)

原子量:H = 1.00、C = 12.0、O = 16.0、Na = 23.0、S = 32.0、Cl = 35.5、I = 127。選択肢から1つ選びます。

中央大学2026年度 理工3学部(一般・英外) 化学 第Ⅰ問(6):問題 7ページの問題文・図・選択肢
問題 7ページ · 公式PDF 9ページ

出題:中央大学。公式問題の該当箇所を抜粋。原本PDF ↗

条件を整理する

25℃でAgClの溶解度積を1.8×10⁻¹⁰ (mol/L)²とします。純水にAgClを加えて飽和させたときと、NaClを加えて塩化物イオン濃度を0.010 mol/Lにしたときの銀イオン濃度、および現象名を問う問題です。

まず、答えから

AgCl飽和溶液にNaClを加えると、銀イオンはどれくらい減る?

Ksp=1.8×10⁻¹⁰から、純水中では[Ag⁺]=√Ksp≃1.3×10⁻⁵ mol/L。[Cl⁻]=0.010 mol/Lにすると、[Ag⁺]=Ksp/[Cl⁻]=1.8×10⁻⁸ mol/Lです。この溶解度の低下を共通イオン効果と呼び、選択肢⑥に対応します。

さわって理解する

Cl⁻が10倍になると、Ag⁺は?

横軸を対数で動かし、指定した平衡時のCl⁻濃度と銀イオン濃度を比べます。Ksp=1.8×10⁻¹⁰、固体AgClが共存する条件です。

Ag⁺濃度(mol/L)Cl⁻濃度(mol/L、対数目盛)10^-410^-310^-210^-110^-810^-710^-610^-5

[Cl⁻]=1.00e-2 mol/L · [Ag⁺]=1.80e-8 mol/L · 濃度の積=1.8×10⁻¹⁰

解法を、順番に。

STEP 01

溶解度積には、水中のイオン濃度を入れる

AgClはAg⁺とCl⁻に1:1で解離します。固体が共存する飽和溶液では、温度が一定なら2つのイオン濃度の積がKspです。

固体AgClの量をそのまま掛けたり、イオン濃度を足したりはしません。ここでは高校化学の濃度による近似を使います。

AgCl(s)⇌Ag++Cl−,Ksp=[Ag+][Cl−]\mathrm{AgCl}(s)\rightleftharpoons\mathrm{Ag^+}+\mathrm{Cl^-},\quad K_{sp}=[\mathrm{Ag^+}][\mathrm{Cl^-}]
STEP 02

純水中では、同じ濃度sを2回掛ける

銀と塩化物はAgClからだけ供給されるので、両方をs mol/Lと置けます。s²=Kspだから、sは平方根です。

√(1.8×10⁻¹⁰)=√1.8×10⁻⁵≃1.34×10⁻⁵。選択肢では1.3×10⁻⁵を選びます。指数をそのまま−10に残さないことが大切です。

s2=1.8×10−10,s≃1.34×10−5 mol/Ls^2=1.8\times10^{-10},\quad s\simeq1.34\times10^{-5}\ \mathrm{mol/L}
STEP 03

添加後は、指定されたCl⁻濃度で割る

NaClからCl⁻が加わると、[Ag⁺]=[Cl⁻]とは置けなくなります。設問で示された平衡時の[Cl⁻]=0.010を、積の式へ入れます。

Kspを保つには銀イオン濃度が低くなる必要があります。NaClを加える操作が銀を直接消すのではなく、溶解平衡が固体側へ移ると考えます。

[Ag+]=1.8×10−101.0×10−2=1.8×10−8 mol/L[\mathrm{Ag^+}]=\frac{1.8\times10^{-10}}{1.0\times10^{-2}}=1.8\times10^{-8}\ \mathrm{mol/L}
STEP 04

共通イオン効果と緩衝作用を区別する

難溶性塩の構成イオンの一方を別の電解質で増やし、溶解度を下げるのが共通イオン効果です。今回はAgClとNaClでCl⁻が共通しています。

緩衝作用は少量の酸・塩基を加えてもpHが変わりにくい作用です。どちらも平衡の考え方が関係しますが、この設問の現象名としては共通イオン効果を選びます。

3問で、思い出す

解き方、つかめた?

ここからはCurigo独自の確認クイズです。選んだあと、理由まで確かめましょう。

0 / 3 問を確認

01 AgClが純水だけに溶けるとき、2つのイオン濃度の関係は?
答えと理由を見る

[Ag⁺]=[Cl⁻]。1:1で解離し、他の供給源がないため等しくなります。

02 温度一定で[Cl⁻]が10倍になれば、飽和平衡の[Ag⁺]は?
答えと理由を見る

1/10倍。イオン濃度の積が一定なので反比例します。

03 AgCl飽和溶液へNaClを加え、溶解度が低下する現象は?
答えと理由を見る

共通イオン効果。Cl⁻という共通のイオンを加えたためです。

よくある疑問

なぜ純水中では平方根を取る?

Ag⁺とCl⁻が同じ濃度sなので、溶解度積がs²になるからです。

固体AgClも溶解度積に入れる?

高校化学で扱うこの平衡式では、純粋な固体の項は定数に含め、イオン濃度の積で表します。

出典・解答の確認

出題:中央大学 2026年度 理工3学部(一般・英外)(2026-02-15実施)化学 第Ⅰ問(6)。問題文・図・選択肢は大学公式PDFの該当箇所を抜粋して掲載しています。「条件を整理する」はCurigoによる要約です。

解説・計算図・確認クイズはCurigoが独自に作成。公開されている解答例との照合に加え、代入・式変形・全列挙・数値計算など、設問に応じた検算を行っています。図の操作は理解を助けるためのもので、証明は本文に示しています。

編集・検証方針 · 誤りの連絡:Curigo編集部